メルセデスベンツ AMG プロジェクト ONE
メルセデス・AMG ONE(ワン)は、メルセデス・AMGが世に送り出すプラグイン式のハイブリッドスポーツカーで、F1仕様のテクノロジーが盛り込まれた限定生産モデルである。2017年のドイツ・インターナショナル・モーターショーにて、ルイス・ハミルトンと当時メルセデス・ベンツのトップでもあったディーター・ツェッチェによって発表された本モデル。生産台数は僅か275台で、その限定生産の価値を保つためにも増産はしない予定だという。AMG ONEはハミルトンの2020年スペックのF1マシンと共に紹介されはしたものの、本来であれば2016年のチャンピョンシップ優勝マシンとのペアが正しいところだろう。というのも、本モデルが使用するのはメルセデスF1 W07ハイブリッド・レーサーに搭載されたハイブリット1.6L V6の別バージョンだからだ。燃焼エンジンが4基の電動モーターと連動して出されるその最高出力数は11,000rpm、最高時速は217 mph (350 km/h)を超えるという。
【スペック】
パワートレイン
現代のF1マシンによく見られるハイブリッド・ドライブトレインを使用したメルセデス・AMG ONEのパワートレインは、475–775 kW (646–1,054 PS; 637–1,039 hp)とされ、内燃機関エンジン(ICE)と4基の電動モーターという異なる機能を持つ5基のモーターを搭載している。
内燃機関エンジン
メルセデス・AMG ONEにはメルセデス・AMG F1 W07 F1マシンの1.6Lターボチャージャー90°V型6気筒エンジンの改良型が使用されていることがメルセデス・AMG役員でもあるOla Källeniusより確認されている。エンジンが改良されることになったのはアイドルスピードとレッドライン(最高出力)が違法となってしまうためとのこと。メルセデス・AMGのトップであるTobias Moersによると、イドリング中の出力は1,280 rpmで、レッドライン(最高出力)の限界では11,000rpmになるという。但し、エンジンは50,000kmしか持たず、リビルドが必要となってくる。ICE(内燃機関エンジン)の出力は558 kW (759 PS; 748 hp)ということは明らかであるが、トルク数については明かされていない。
電動モーター
ICE(内燃機関エンジン)が4基の電動モーターと連動:
120 kW (163 PS; 161 hp) MGU-K(モーター・ジェネレーター・ユニットキネティック)とクランクシャフトのコンビの場合。
90 kW (122 PS; 121 hp) MGU-H(モーター・ジェネレーター・ユニットヒート)とターボチャージャーのコンビの場合。
120 kW (163 PS; 161 hp) フロントアクセルの2基の電動モーターの場合。
MGU-KとMGU-H、そしてF1スタイルのモーターが、稼働中でもエネルギーを回収し、パフォーマンスの効率を上げる仕組みである。
具体的には、MGU-Kがブレーキ時に発電し、MGU-Hがターボチャージャーのラグを排除することによってタービンを高速回転し続け、スロットルの反応を改善するのである。また、残りの2基の電動モーターが前輪を動かす形で全輪駆動のドライブトレインを可能にしている。この4基の電動モーターが合わさって450 kW (612 PS; 603 hp)という出力数を生み出し、ONEの総出力数に貢献している。
トランスミッション
トランスミッションは8段変速シングルクラッチの自動マニュアルトランスミッション(現代のF1マシンによく見られるタイプ)で、エンジン出力とトルクの大半を後部車輪に送り込むタイプ。シングルクラッチを採用した理由は、AMGのエンジニアによる車両の軽量化と、デュアルクラッチと回転数の多いV6 ICEとの相性を考慮したためとのこと。
ホイール
ONEのホイールはアルミニウムアロイとカーボンファイバーから成り、前輪は直径19インチ、後輪は20インチでセンターロック用のホイールナット付きである。タイヤにはMichelin Pilot Sport Cup 2s(前輪285/35 ZR 19、後輪335/30 ZR 20)が採用されている。
また、ブレーキにはベンチレーテッドカーボンセラミックディスクを使用。
インテリアの特徴
ミニマリストでドライバー中心というインテリアのスタイルは、F1からの流れを汲んでいる。F1仕様のハンドルとペダルやドライバーを最重要視したセントラルインフォテーメント・スクリーンがその最たる特徴である。勿論、手刺繍の入ったナパレザー素材のバケットシートなど、従来のインテリアにおけるラグジュアリーな特徴も押さえている。
外装の特徴
車両の外装はエアロダイナミックを軸にデザインされてはいるものの、ロードカーとしての基準を満たすものである。大きなフロントエアーインレット、屋根部分に取り付けられたエアインテイクや車体の後ろ半分まで拡張されたエアロダイナミックフィンが大きな特徴として挙げられる。
シャシー
F1マシンに倣ってボディは全てカーボンファイバー製。これにより最終的な車両重量は1,200–1,300 kgと言われてる。
パフォーマンス
• 最高時速: >350 km/h (217 mph)
• 0-100 km/h (62 mph): <2.2 秒
• 0-200 km/h (124 mph): <6.0 秒
• 0-300 km/h (186 mph): <11.0 秒
また、ビジュアライザーを使用して未来のオーナー仕様にオプションをカスタマイズできるのは、CLK GTR のStraßenバージョンを彷彿させる。
現状選択されているオプションは:レッドとレンガ色のリバリーとマッチングカラーのシートベルト及びシートヘッドレストのAMGロゴ刺繍。
コンフィグレーターには鮮やかなグリーンやイエロー、2017年9月のフランクフルト・モーターショーで展示されていたクラッシックなシルバー仕上げもある。
従来の基準より厳しいと言われるWLTP(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)を満たすターボチャージャー付1.6L V6エンジンの開発に時間を要したため、納車開始のスケジュールは2021年となっている。
再度記すると、最高出力11,000 rpm/1,000hpのエンジンは、2016年のF1 W07を基にしており、50,000kmでリビルドが必要である。
**参考用写真に付き、実際に今回オファーされている車両ではありません**